• 「目に見えないもの」を親子で想像する豊かさを教えてくれる絵本『ほしのおんがくかい』

    「目に見えないものを描きたい」スウェーデンの白夜から誕生した絵本

    『ぺんぎんたいそう』で知られる人気絵本作家・齋藤槙さんの新刊『ほしのおんがくかい』は、目に見えない「美しいもの」「大切なこと」について描く美しい一冊です。


    (あらすじ)
    物語の主人公は、はりねずみくんと、視力がほとんどないもぐら君。一番星が輝く頃、お茶の時間を楽しんでいると、突然、近くに星の子・ポッチが落ちてきます。「このままじゃ ほしのおんがくかいに でられないよ」。泣き出すポッチを助けるため、2匹は高い山を目指します。果たして、ポッチは音楽会に間に合うのでしょうか──?


    作者の斉藤さんは、白夜のスウェーデンの教会でスケッチをしているときに、この絵本の着想を得たそうです。そして、その時感じたことについて、このように語っています。

    「『そうだ、わたしはこれから めにみえないもの を描くんだ』と思いました。たしかに感じるけれど、かたちとして現れないものたち。子ども時代にはそれに怯えていたけれど、そういうものを描いていくんだ、とその時感じました。」(齋藤槙さんのInstagramより)

    そんな強いインスピレーションから4年半。長い時間をかけ、作者の強い思いが形になった一冊です。

    コロナ禍を生きる息子、絵本が見せてくれた『特別な景色』

    写真1

    夜9時、いつもの絵本タイム。小学2年生の息子と一緒に『ほしのおんがくかい』を読みました。その頃息子は、2度目の学級閉鎖の只中(ただなか)にいました。

    長く続く閉塞的な時間。「公園にでも行こうか?」と私が誘っても、「いや、不要不急の外出は控えるようにって言われてるから…」と、息子は一歩も外に出ようとしません。

    子どもたちの間でも急速に感染が広がるオミクロン株の怖さを、幼いながらに強く感じているようでした。

    「ゆうやけの そらに ほしがひとつ ぴかっ」

    絵本を読み始めると、息子はただ黙って話を聞いていました。途中、感想を挟むことなく、じーっと。

    読み終えてもまだ静かにしているので、「珍しいな」と思いながら電気を消し、私も静かにしていると、息子がポツリとこう言ったのです。

    「山の上のてっぺんまで行ってさ、こうして目をつぶって、耳を澄ましたら、本当に聞こえるのかな。星の音が。」

    息子の言葉に、なんだか胸がぎゅっと締め付けられるような思いでした。家の中に閉じこもり、不安や、怖さを抱えていた息子を、この絵本は「恐れのない、静かな山のてっぺん」へ連れて行ってくれたのです。絵本がもたらしてくれる「想像力」というギフトは、なんて尊いのでしょう。

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    「だってさ、お母さん。『星は生きてる』って青少年科学館で言ってたよね。」

    「あー、そうだね。」

    「だから、もしかしたら聞こえるかも。実際は風に揺れる葉っぱの音しか聞こえないかもしれないけどさ。」

    「もし聞こえるとしたらどんな音だと思う?」

    「ヒュー!! とか、ヒュヨーン!とか。」

    「ヒュヨーンか(笑)」

    「あ! そうだ! キャンプしながらできたら楽しそうじゃない? バーベキューしてマシュマロ焼いて、星の音を聞いてさー。あ、でも、それじゃ火の音しか聞こえないかな。」

    そんな話をひとしきりして、息子とこんな約束をしました。

    「雪が溶けて、良い季節がきたら、山に行って火を焚いて、マシュマロを焼こう。そして一緒に目をつぶって寝転んで、星の音を聞いてみよう。」

    コロナ禍を生きる私たち親子に、ふっと優しい風が吹いたような夜のひとときでした。

    齋藤槙さんが描く愛らしい動物たちが教えてくれること

    写真2

    絵本を読み終えて、息子がもう1つ口にした感想がありました。

    「この絵本を描いた人はさ、もぐらの性質をよく理解してるんだね。」

    その感想を聞いて、「あー、なるほど」と合点がいきました。齋藤さんは『ぺんぎんたいそう』の作者。ぺんぎんのユニークな動きの1つ1つを「体操」に見立て、子どもたちを夢中にさせましたが、この絵本では「もぐら」が重要な役割を果たします。動物の特性をよく理解し、その動きを観察して描かれる愛らしい主人公たちは、ストーリーの中を生き生きと動き回り、子どもたちの心を掴むのです。

    ちなみに息子は、もぐらの「目が見えない」という特性をこの絵本を通じて初めて知りました。

    「見えないからこそ、聞いたり、嗅いだり、“感じる”のが得意なんだね。」

    絵本の根底に流れるメッセージは、愛らしい動物の姿に投影され、子どもたちの深い理解に繋がっているように感じました。

    親子で「目に見えないもの」を想像する豊かな時間を

    もし私が1人でこの絵本を読んでいたら、「素敵な空想の物語だなぁ」と言って終わってしまったかもしれません。でも、子どもの想像力は、私にも特別な景色を見せてくれました。

    大切なのは、実際に見えること、聞こえることではなく、子どもと目をつぶり、聴こえない何か、見えない何かを想像し、夢を膨らませ、心を通わせるひとときなのだと思います。

    作者のメッセージが優しく伝わる一冊。ぜひ親子でこの絵本を手に取り、「目に見えないもの」を想像する、豊かな時間を過ごしてみてください。


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    『ほしのおんがくかい』
    ■作  :齋藤 槙(さいとう まき)
    ■発売日:2022年1月22日(土)
    ■定 価:1,540円
    ■出版社:世界文化社
    ■対象年齢:3〜5歳から
    ■公式サイトはこちら

    谷岡碧

    谷岡 碧

      2012年にテレビ東京を退社後、タイへ移住してNGOで勤務。17年に帰国後は札幌へ住み、幼なじみと読み聞かせユニット「エネッツ」を結成。21年春から、主婦と生活社の女性向けサイト「CHANTO WEB」でライターとしても活動中。夫と小学2年生の長男、3歳の長女と暮らす。札幌市出身、36歳。

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