本で学ぶ性教育 広がる 新刊20冊超 年間最多 「わが家流」伝え方探って

性教育に関連する児童書の新刊が並ぶMARUZEN&ジュンク堂書店札幌店(国政崇撮影)

性教育に関連する児童書の新刊が並ぶMARUZEN&ジュンク堂書店札幌店(国政崇撮影)

性教育をテーマにした本がこの2年、相次いで出版されています。口、胸、性器などの「プライベートゾーン」が大切だと3歳くらいから学べる絵本、保護者向けのコミックエッセー本など、内容や問題へのアプローチの仕方はさまざまで、保護者の選択肢が増えました。うちの子とどう向き合うか、助けになる一冊を選びたいところです。


空知管内沼田町の保健師鈴木悠里江さん(34)は2歳と4歳の兄弟の母。寝る前の読み聞かせで性教育の絵本を選ぶ日があります。初めは聞いているだけだった2人が、次第に「これは何?」と興味を持つようになったといい、「子どもの反応を見ながらいろいろと買っています」。

MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店(札幌市中央区)の児童書コーナーには、性教育の本が約50冊並んでいます。児童書担当の阿部遥奈さん(28)は多様化を実感しています。「不審者からどう身を守るかや、『性的同意』について教えたり、LGBT(性的少数者)など性の多様性に触れたり。体の仕組みにとどまらない踏み込んだ本が増えました」

出版科学研究所(東京)の調べでは、性教育に関連する書籍の新刊は2019年が10冊でしたが、20年は22冊と倍増しました。今年は10月末現在で24冊。年によってばらつきはありますが、過去10年で最多です。

なぜ増えているのでしょう。きっかけとされているのが、20年3月に出たコミックエッセー「おうち性教育はじめます」(フクチマミ、村瀬幸浩著、KADOKAWA)です。この種の実用書では異例とも言える29万部を突破しました。「一番やさしい! 防犯・SEX・命の伝え方」との副題で、3~10歳の子を持つ家庭での日々の言葉のかけ方など、分かりやすく解説しています。

同研究所の主任研究員、久保雅暖(まさはる)さん(40)は「マンガという切り口が親しまれたと思う。このような家庭向けの本が増えたのは最近の傾向です」と分析しています。

「おうち性教育はじめます」の一場面(KADOKAWA提供)

性の健康教育に取り組むNPO団体ピーチハウス(札幌)の吉裕子さん(53)は「本は多様化し、ネットでもYouTubeなどで関係者が発信しています。選択肢が増えたのは望ましいこと」と話します。本の選び方について吉さんは「まず、3回じっくり読んでみましょう。保護者が納得、安心できる内容かどうか。『わが家流』の伝え方を探ってみてください」と助言しています。

就学前にお薦めの一冊

性教育の本に詳しい2人に、就学前の子どもにお薦めの本を聞きました。

上川管内剣淵町で性教育に取り組む保健師松下由惟さん(32)は、幼児期の最初の絵本に「だいじだいじどーこだ?」=写真左=(大泉書店)を挙げます。自分も他人も大切な存在であることや、「プライベートゾーン」について肯定的に伝えます。

「げっけいのはなし いのちのはなし」=写真右=(みらいパブリッシング)は母と息子の会話を通して、月経の仕組みのみならず、命の尊さを教えます。「月経を男の子に語る、という構図が新しい。年長さんぐらいから楽しめます」と松下さん。

旭川市の児童書専門店「こども冨貴堂」で性教育コーナーを約10年担当する山本公美さん(51)は「ようこそ!あかちゃん せかいじゅうの家族のはじまりのおはなし」=写真左=(大月書店)を推します。科学的な説明が特徴。家族の多様なあり方にも言及しています。山本さんは「子どもが分かる範囲で少しずつ教えてあげてください」と話します。

ロングセラー「せっくすのえほん」=写真右=(子どもの未来社)も読んでほしいといいます。「赤ちゃんはどこから生まれるの」という素朴な質問に答える内容で、2019年に新装版が発行されました。

取材・文/有田麻子(北海道新聞記者)

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