• こども庁23年度発足へ 権利守るのは大人の責任

    写真はイメージ=PIXTA
    子どもに関連する施策を進める司令塔として政府が創設を目指す「こども庁」。基本方針案が11月29日に判明し、子どもの意見を政策に反映させる制度が盛り込まれました。創設は2022年度から遅れ「23年度のできる限り早い時期」に。子育て世帯に影響する、こども庁はどのような組織を目指し、子育て支援はどうあるべきか―。「子育て罰」(光文社新書)著者で日本大文理学部教授の末冨芳(すえとみかおり)さん=教育行政学=に聞きました。

    末冨芳さん

    子育て支援に人と予算を

    ――子育て支援で「高所得世帯には国からお金を出さなくていい」との声は根強いです。

    「子育てへの公費投入の手薄さを改善すべきなのに、菅前政権は22年10月から高所得世帯への児童手当をやめると決めました。高所得の親は多額の税金を納め、子育てもして社会貢献しているのに、国が支援から排除するなら子どもを産まなくなる人も増えるでしょう。普遍的給付を基本としつつ低中所得層には積み増す支援策が急務です」

    ――なぜ、給付は所得などで区別せずに行うべきなのでしょうか。

    「社会の分断を避けるためです。子ども2人で両親がいる世帯の場合、年収800万円を超すと納税額に対する受益が急に悪化し、稼ぐほど減る。低所得層でも住民税が非課税かどうかで受益の差は大きく、私立高の授業料無償化は590万円未満が対象です。今の子育て支援はあらゆる所得層を分断する仕組みです」

    ――18歳以下への10万円相当給付も、年収960万円以上はもらえません。

    「子育て世代での分断を生む上、数パーセントの高所得層を対象から外すために膨大なコストがかかる。大いに疑問です」

    ――幼稚園や小中学校の担当は文部科学省に残る方向です。

    「幼保一元化が進まないと批判する人もいますがナンセンスです。幼稚園、保育園、認定こども園は府省の連携体制があり、カリキュラム面も共通化しつつある。最優先は子どもの貧困、自殺、不登校の対策や性暴力の禁止など、より良く生き、虐げられないための施策です。保育士や幼稚園教諭の待遇改善も急務です」

    ――子どもの権利を保障する、こども基本法(仮称)制定を求めていますね。

    「虐待や自殺、不登校が深刻化し、いかに子どもを守るかが社会的課題として共有されつつある。子どもの権利の実現という基礎理念があれば省庁間の連携も図りやすくなるはずです」

    ――基本法はどんな内容にするべきですか。

    「一つは『子どもの最善の利益』について『その実現は大人の責任』と規定すること。もう一つは子どもの意思が尊重され、子どもが自分の意見を大切にして表明し、活動できる『参加する権利』の明記です。子どもの権利の推進体制をどう作るかもポイントです」

    ――参加する権利は、なぜ重要なのですか。

    「参加の経験がないと社会を担う側になれず、日本ではその機会が欠けています。例えば校則は学校が一方的に決めている。生徒が見直そうとしても拒まれるだけなら無力感しか学べず、社会参加の意識も高まりません」

    ――政府の有識者会議が報告書を公開しています。注目すべき点は。

    「子どもや子育て当事者の視点を強調しているところが目を引きます。こども基本法や子ども政策の財源と人員の確保、子どもの参加のしくみや子どもの権利を守る職について盛り込まれたことは評価できる。今後の具体化が急がれます」

    ――こども庁に必要な予算と人員は。

    「概算で単年度予算1兆5千億円、職員1万5千人が新たに必要です。児童手当や高校授業料の無償化などを普遍的に行う額で、財源は資産課税や企業負担、教育国債の発行などが考えられます。子どもの権利を擁護する職員が全国で約3千人、全中学校区約1万2千区に常勤のスクールソーシャルワーカーを1人置く試算です」

    「罰課す」冷たい社会変えよう

    子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには(光文社新書)

    末冨芳さんと立命館大産業社会学部准教授の桜井啓太さん(社会福祉学)の共著で7月に出版しました。

    子育て世帯への公的投資が少なく、教育費の高さや1人親世帯の貧困が深刻な日本の現状について「政治や社会が親子に冷たく、厳しい罰を課していると言うべき状況」と指摘します。

    桜井さんが「child penalty(チャイルド ペナルティー)」という概念を「子育て罰」と訳しました。「子育て罰」が生み出されてきた経緯を踏まえながら、子どもへの公的投資の拡充などを主張しています。

    末冨さんは「すべての子どもを大切にする法と政策への転換が、失敗してきた少子化対策を進化させる道になる。子育てへの罰をやめようとのメッセージが伝わりやすいと考え、編集者と書名を決めました」と話しています。1012円。

    こども庁
    子育て支援や児童虐待防止、貧困対策など省庁をまたぐ子ども関連の政策を一元的に担う。省庁の縦割りを越えて政策を効果的に進める狙い。有識者会議の報告書を受けた政府の基本方針案では、子どもから意見を聴き政策に反映させるモニター制度の導入や、現場で支援に取り組む民間人材の積極登用を盛り込んだ。

    取材・文/町田誠(北海道新聞編集委員)

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