連載コラム「瀬川院⻑のすくすくカルテ」第30回

授乳中のコロナワクチン、赤ちゃんを守る効果ある? 母乳に抗体感染予防の可能性

Q.質問

3カ月の子に授乳中です。新型コロナウイルスのワクチン接種を考えていますが、授乳中でもちゃんと免疫がつくのか、赤ちゃんへの影響などが心配です。また、母親が接種すると、授乳中の赤ちゃんを感染から守る効果があると聞いたのですが、本当でしょうか。

A.回答

私のクリニックでは母乳外来をやっていることもあり、授乳と新型コロナワクチンに関する質問が多くあります。新型コロナワクチンの接種が世界中で広がるにつれ、授乳との関係でも、いろいろなことがわかってきました。 

米ファイザー製と米モデルナ製のワクチンは、メッセンジャーRNA(mRNA)というウイルスの遺伝物質が主成分です。授乳をしている・していないで、mRNAワクチンの効果が違うかどうかですが、両者の間に差はなく、高い免疫がつくとされます。ちなみに妊娠中の方も、同様に高い免疫がつくことがわかっています。 

赤ちゃんへの影響については、そもそも母乳中にワクチンのmRNA成分が出てくるかどうかが気になるところです。ワクチン接種24時間後の母乳13検体を調べた海外の研究では、いずれの母乳にもmRNAは検出されませんでした。

一方、別の研究ではワクチン接種後1週間以内の母乳の10%に微量のmRNAが検出されたという報告があります。しかし、その検出量は多くても1ミリリットル中に2ナノグラムという量であり、このナノグラムという単位は10億分の1グラムという超微量で、何らかの生理学的作用を起こすことはおよそ考えられない量であるとされます。また仮に母乳と一緒にmRNAを赤ちゃんが飲んだとしても不安定なmRNAはすぐに消化管の中で分解されてしまいます。

授乳中の母親にワクチンを接種すると、新型コロナウイルスに特異的に反応する免疫グロブリンA抗体と免疫グロブリンG抗体が母乳に出てきます。いずれも接種後6週間は母乳中に分泌されるとされ、乳児の新型コロナの感染予防に何らかの役割を果たしている可能性が指摘されています。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

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