連載コラム「瀬川院長のすくすくカルテ」第26回

ノロ胃腸炎、治っても1週間休む? 欧米の「48時間」より厳しい措置

Q.質問

1歳の娘が保育園で流行しているノロウイルス胃腸炎にかかり、別の保育園に通う兄にも感染しました。2人とも数日で治りましたが、娘の保育園から、さらに1週間休むよう言われました。理由は「下痢が治っても便にウイルスがまだいるから」とのこと。仕事をさらに1週間休むのは大変で、困っています。

A.回答

ノロウイルスは感染力が強く保育園などで集団感染がしばしば発生します。感染経路は、ウイルスが、便や嘔吐(おうと)物を介して人の手につき口に入る経口感染が主ですが、飛沫(ひまつ)感染や、乾燥して空気中で微細な粒子となった嘔吐物による空気感染もあります。潜伏期間は1~2日ほど。嘔吐や下痢、発熱などの症状が出てから数日で治ります。

厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」では、ノロウイルス胃腸炎の登園の目安は「嘔吐、下痢等の症状が治まり、普段の食事がとれること」となっています。あわせて「症状のある間と、症状消失後1週間」は周囲に感染しやすいともあり、これが「1週間の休み延長」の根拠となったのかもしれません。

欧米のガイドラインは、「48時間ルール」と称して、下痢などの症状が消えてから48時間たてば登園可能とし、それ以上の登園停止は必要ないとしています。 理由は、《1》便からのウイルス排出が多いのは感染後24~48時間でそれ以降は排出が減る《2》感染が起こりやすいのは下痢便で、普通便では起こしにくい《3》ノロウイルスのRNAと呼ばれる遺伝物質は、症状が消えてから4~8週間は検出されるが、感染力を持つかどうか確認されていない―ことなどが挙げられています。

下痢が治まってからさらに1週間の登園停止というのは、行き過ぎと思われます。ただ、登園再開後も、お子さんが排便した後やオムツ替え後の手洗いを徹底するなど、周りの大人の衛生面への配慮が必要なのは言うまでもありません。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

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