連載コラム「瀬川院⻑のすくすくカルテ」第16回

新型コロナにかかると川崎病になるの? 症状似ているが違う病気

Q.質問

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかると川崎病になるという話を聞いたのですが、どのようなことでしょうか。

A.回答

川崎病は1967年に川崎富作博士が初めて報告した病気です。4歳以下の乳幼児、特に1歳前後に多く、日本では毎年約1万5千人が発症しています。原因はいまだ不明ですが、ウイルス等への感染を契機に過剰な免疫反応が起き、全身の血管に炎症が起きて発症すると考えられています。症状は《1》発熱《2》目の充血《3》唇の発赤《4》発疹《5》手足の赤い腫れ《6》首のリンパ節の腫れなどで、五つ以上あれば診断は確定します。

治療は、炎症を抑えるアスピリンと免疫グロブリン等の薬を使用します。適切な治療により多くは数日以内で症状が治まりますが、炎症を抑えられないと、心臓の血管にこぶができる「冠動脈瘤(りゅう)」が発生します。これは自然に治ることもありますが、大きい冠動脈瘤は後々、血栓や心筋梗塞などの問題を起こすことがあるため、血管の炎症を早期に抑えることが川崎病の治療では重要です。

一方、新型コロナの世界的流行に伴い、感染した子どもが川崎病と同じ症状を示す症例が海外で多数報告されています。これらは、新型コロナに感染した25日後ぐらいに強い全身性の炎症を示す病状で発症します。ある報告では、40%の例が川崎病と同じ症状を示し、8%に冠動脈瘤を認めたとされます。

しかし、罹患(りかん)者の4分の3が5~20歳と発症年齢が高く、胃腸症状や重い心血管障害の出現頻度も川崎病よりはるかに高いことなどから、川崎病と似てはいるが違う病気であるとされ、小児発症多系統炎症症候群という病名がつけられました。

なお、日本では新型コロナの流行に伴って川崎病の発生が増えたという事実はないとされています。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

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