連載コラム「瀬川院⻑のすくすくカルテ」第40回

赤ちゃんの水分補給は必要? 母乳やミルクだけで十分

Q.質問

4カ月の長男は、ときどき粉ミルクを飲みますが、ほぼ母乳で育っています。家には冷房がなく、扇風機などでしのいでいますが、暑い日にはぐっしょり汗をかいています。そういうときは脱水や熱中症予防のため、麦茶や乳児用のイオン飲料を飲ませた方がよいでしょうか。

A.回答

小さい子どもは汗っかきと思われていますが、実はそうではありません。汗を出す汗腺の数は日本人の場合およそ230万個とされ、その個数は赤ちゃんから大人まで同じ数です。

つまり、皮膚の単位面積当たりの汗腺の密度は、小さい子どもの方がより高いのです。汗腺の数が多い部位は、胴体>顔や首>手足の順番ですが、子どもでは6、7歳ごろまで頭のてっぺんからの発汗が目立ちます。暑い時などに、子どもの頭や顔から、汗がしたたるように出るので、「子どもは汗っかき」と思われてしまうのです。実際に出る汗の量は、実はそれほど多くはありません。

さて、母乳やミルクだけで元気に育っている赤ちゃんが汗をいっぱいかいた時、別の水分補充が必要かということですが、結論を先に言えばその必要はありません。

母乳の成分の89%は水分です。生後6カ月まで、赤ちゃんが母乳だけをたっぷり飲んでいれば、水分や塩分が不足することはありません。また、粉ミルクも規定通りの調乳方法でたっぷり飲んでいれば、水分等は不足しないように設計されています。

ちなみに高温多湿のジャマイカやインドで、母乳だけで育っている健康な赤ちゃんを調べた研究があり、他の水分補充の必要はないという結果が示されています。

赤ちゃんの発汗機能と体温調節能力は未熟です。環境に応じて、温度への配慮はもちろんですが、汗をいっぱいかいたときに、汗を放置しておくと、寝冷えやあせもの原因になりますので、それらへの対処も必要です。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

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