O157感染したが無症状 腸炎軽くても合併症に注意
2022/07/08瀬川院⻑のすくすくカルテ #39
北海道新聞朝刊「⼦育て⾯」で毎⽉第2⾦曜⽇に連載中のコラム。のえる⼩児科(札幌市豊平区)の瀬川雅史院⻑が、⽇常診療の場でママ達から受ける様々な質問に答えます。Q.質問
連休中に親戚が集まって庭でバーベキューをした数日後、数人にひどい下痢や血便などが出ました。病院で検査をすると「O157」の感染がわかりました。一緒にいた1歳半の長男の便にも保健所の検査でO157が出て、「ベロ毒素」は陽性でした。症状はなく全く元気なのですが、大丈夫でしょうか。A.回答
大腸菌はもともと人や家畜の腸内に存在し、多くは無害です。しかし、出血を伴う腸炎や重大な病気を引き起こす腸管出血性大腸菌とよばれるタイプがあり、O157はその仲間です。この菌はベロ毒素という非常に強力な毒素を産生し、重症な病気を引き起こすことが特徴です。O157は主に牛の腸に存在し、ふんなどを介して牛肉やその他の食品に付着し、菌が口に入ることで発症します。感染はわずか100個という菌数で成立するとされます。[広告]
一方で、O157は熱に弱く、75度で1分間加熱すれば死滅します。したがって、食中毒の予防として肉の十分な加熱が大切です。なおO157は低温に強く、家庭の冷凍庫では死滅しないとされます。
O157に感染した場合、無症状の場合もありますが、その約半数に、およそ4日の潜伏期を経て下痢や腹痛、血便などの症状が出ます。そしてその6~7%に、血液が壊れ腎障害が起きる溶血性尿毒症症候群や脳症などの重大な病気が起きます。
さて相談のお子さんは感染後1週間以上たってから受診しました。まれに、出血性腸炎が軽くても重大な合併症が起きることがあります。このお子さんの場合、無症状で元気もよく、重症な合併症を起こす可能性は低く、抗菌薬は不要であると判断しました。
親御さんにはおむつの処理や手洗いなど便からの感染予防に十分な注意を払い、お子さんの様子を注意深く観察し、何かあればすぐ受診するように説明しました。3日後に再受診とし、その1週間後、菌の陰性化を確認し、無事フォローは終了となりました。
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