子どもの歯並び 矯正はいつから?

写真はイメージ(Mills / PIXTA)

子どもの歯並びを気にしたことはありますか。歯がどんな状態だと矯正治療を始めるべきなのか、どれくらい時間がかかるのか―。健康保険が適用されず費用負担も小さくありません。保護者が知っておきたいポイントを、矯正治療の専門家と小児歯科の医師に聞きました。


歯並びは口元の印象だけでなく、歯磨き後の汚れが残りやすくなると、虫歯や歯周病のリスクにも関係します。矯正が望ましいとされる歯並びは、かみ合わせると下の前歯が上の前歯より外側に出る反対咬合(こうごう)(受け口)や、奥歯をかんでも前歯が閉じない開咬(かいこう)などがあります。

日本小児歯科学会はホームページで歯並びやかみ合わせの治療に関するQ&A(ページはこちら)を公開しています。「料金体系や金額は医院によって異なる」とした上で、乳歯だけなら3万~20万円、乳歯と永久歯が交ざる時期だと15万~60万円、永久歯がそろった後は50万~130万円が一般的と紹介しており、かなり幅があります。

治療期間も、子どもの状況や医師の方針によって開きがあります。子どもの成長過程に合わせ、永久歯がはえそろう前の1期と、永久歯がそろった後の2期というように、時期を分けて治療する医院もあります。また、矯正器具の装着で痛みが出たり、治療で歯の根が短くなったりするリスクがあることも認識しておきたいです。

2期に分ける治療法も

日本矯正歯科学会認定医・指導医で、北海道医療大歯学部の飯嶋雅弘教授(56)は、1期治療の目的として①あごの骨の成長の管理②発育に悪影響を与える障害を除く③2期で永久歯を抜かずに治療できるようにする―の3点を挙げます。

飯嶋雅弘教授

飯嶋雅弘教授

飯嶋教授は「1期では患者の状態をしっかり診断し、2期の終わりをイメージして最適な治療法を探ります。経済的負担や転勤などの理由から治療を1期で終わらせたり、1期をやらず2期から始めるよう調整したりします」と説明します。

「多少の出っ歯や前歯の上下の開きは気にしない保護者もいますが、治療が必要な場合もあります」。放置することで、歯が折れる、あごが変形するなどの影響が懸念されるからだといいます。気になる歯が1本でもあれば、まず歯科医に相談したいところです。

飯嶋教授によると、1期治療は4年が一般的。あごの骨の成長を管理し、歯を動かす「動的治療」に1年をあて、その後は3カ月に1回、経過を観察します。2期は動的治療に2年、経過観察に最大5年かけます。高校卒業の時期に合わせて2期治療を終えるケースもあるそうです。

家での指しゃぶり注意

日本小児歯科学会専門医指導医で、庄内こどもの歯科(札幌市西区)の庄内喜久子院長(62)は「かみ合わせの状態により、乳歯がはえそろった3歳すぎから矯正を始める場合もあります」と話します。

矯正器具は、歯に常時付けるワイヤ型(庄内こどもの歯科では40万円から)や、着脱自由で就寝時を中心に1日通算12時間以上つけるマウスピース型(同10万円前後)、あごの固定器具をゴムバンドで支えるチンキャップ型(同10万円前後)などがあります。いずれも月1回程度の調整と定期的な交換・買い替えが必要です。

庄内喜久子院長

庄内喜久子院長

庄内院長は、3~5歳の反対咬合に対する矯正器具はマウスピース型を勧めます。早いと3カ月で改善されるそうです。ただ、つい付け忘れたなど、定められた装着時間を守れないと治療期間が長引いてしまいます。「まず3カ月間マウスピース型を試し、管理が難しいなら、ワイヤ型や固定式のプレートに替える方法もあります」

日々の生活も歯並びに影響するといいます。「指しゃぶりや舌で遊ぶ癖、唇を吸う癖に気をつけて」。3歳以降も指しゃぶりが続くと、上の前歯の中央4本が外側に突き出て出っ歯になり、下の前歯が内側に傾いたり、前に突き出たりして前歯がかみ合わなくなり、麺がかみ切れなくなる可能性も。そうなると、無意識に前歯の上下の隙間を舌でふさごうとするので、前歯が舌に押されて隙間が広がり、歯周炎の原因にもなります。

眠いときやテレビを見ているときに指をしゃぶる子が多いそうです。「『だめ』と言葉をかけ続けると、我慢がストレスになり良くないです。両手を使う遊びをさせ、一緒に歌を歌うなど、意識を指しゃぶり以外に向けさせましょう。子どもに両手を使う家事の手伝いを頼んでもいいですね」

取材・文/町田誠(北海道新聞編集委員)

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