連載コラム「瀬川院⻑の子育てカルテ」

ピロリ菌検査は子どもも必要? 無症状ならすぐには必要なし

Q.質問

10歳と7歳の男児の母です。最近胃の調子が悪く胃カメラ検査をしたところ、ピロリ菌陽性の胃炎とわかり、除菌治療をしました。子どもにもピロリ菌の検査と治療を受けさせた方がよいでしょうか。私の家系は胃がんが多く心配です。

A.回答

ピロリ菌は胃粘膜に感染する細菌で、胃炎や胃・十二指腸潰瘍にとどまらず、多くの病気の発症に関わっています。日本人に多い胃がんは、ピロリ菌感染によって5倍以上もリスクが高くなるとされます。逆にいえばピロリ菌の除去で胃がんが予防できるわけです。

日本人のピロリ菌感染率は、60歳以上だと60%、40代で20%、20代で10%、小児~10代では2~5%ぐらいとされます。ピロリ菌感染の多くは家庭内で、幼小児期に成立するとされます。5歳以下の小児は消化管免疫が未熟なため、侵入したピロリ菌を排除できず、定着してしまうと考えられています。

小児のピロリ菌感染症の診断・治療方針は、まだ定まっていない部分もありますが、15歳以下の無症状の小児については、胃がん予防のためのピロリ菌検査や除菌はしないとする指針が示されています。これは小児でのピロリ菌除去が成人のように胃がんのリスクを低下させるという根拠が明らかでなく、また欧米の指針でも推奨されていないなどの理由によるものです。

一方で、無症状でも中学生なら検査や除菌をした方がよいという考え方があり、中学生の集団検診で尿によるピロリ菌の検査を行っている自治体もありますが、これには賛否があります。

ご相談のケースですが、子どもさんが無症状ならすぐに検査をする必要はないと思われます。ただし何らかの腹部症状があったり、貧血、血小板紫斑病などピロリ菌が関連するかもしれない病気がある場合はこの限りではありません。

(瀬川雅史=のえる小児科院長)

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